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9月公開の贖罪と覚悟のドキュメンタリー『揺さぶられる正義』予告編と絶賛コメントが解禁

 弁護士から転身した異色の経歴を持つ報道記者が、自身が携わった事件報道を通してマスコミや司法のあり方に向き合っていくドキュメンタリー『揺さぶられる正義』が9月20日より公開されるのを前に予告編が解禁。また、メディア関係者や法曹関係者などが作品に推薦コメントを寄せています。

 乳幼児が身体を激しく揺さぶられることで脳などに損傷を生じ、死に至ることもある「揺さぶられっ子症候群=SBS(Shaken Baby Syndrome)」。日本では、2010年代に乳児がSBSと診断され、揺さぶりによる虐待をおこなったとして親や親族が逮捕・起訴される事件が多発した一方、裁判で冤罪と認められて無罪判決が続出する異例の状況となりました。
 在阪テレビ局・関西テレビでは、このSBS冤罪事件を追った特集番組を数年間にわたり制作・放送しており、文化庁芸術祭優秀賞を受賞するなど高い評価を受けています。
 その一連の特集番組に、新たな取材と視点を加えて長編ドキュメンタリーとして映画化したのが『揺さぶられる正義』です。

記事写真

『揺さぶられる正義』場面写真。上田大輔監督

 監督をつとめたのは、社内弁護士として関西テレビに入社し法務に携わったのち、自ら希望して報道局記者へと転身した異色の経歴を持ち、記者1年目からSBS事件に携わってきた上田大輔監督。
 子や孫を虐待したとして逮捕・勾留され、数年間の時間や家族の絆を奪われ、無罪判決ののちも逮捕時の報道は記憶や記録に残り続ける。『揺さぶられる正義』は、SBSの診断にあたった医師たちと「虐待」に疑問を呈する弁護士や法学者たち、それぞれの活動を追うとともに、「被疑者」とされた親や親族が失ったものに視点を向け、報道記者である上田監督自らが自分たち「報道する側」の暴力性と向き合っていく、監督自身の内面を映し出す映画ともなっています。

 映画公開を前に解禁された予告編は、かつての「被疑者」が報道する側に向けた問いかけの言葉で幕を開け、SBS事件のあらましを追いつつ、作品で上田監督が描こうとするものの一端を示す予告となっています。

【『揺さぶられる正義』予告編】

 また、作品に寄せられた推薦コメントが解禁されました。
 『国葬の日』(2023年)監督の大島新さん、『能登デモクラシー』(2025年)などの監督作がある石川テレビ記者の五百旗頭幸男(いおきべ・ゆきお)さん、『さよならテレビ』(2019年)などを監督した東海テレビの圡方宏史さんが、同じドキュメンタリー監督の立場から作品や上田監督について語るほか、直木賞作家の一穂ミチさん、多くのテレビドラマを手がける脚本家の井上由美子さん、『Shall we Dance?』(2004年)などの監督・周防正行さんらが、それぞれの視点から作品に称賛のコメントを贈っています。

小説家:一穂ミチさんコメント

わたしたちのカラフルな色眼鏡が
「疑われる人」を「疑わせる人」に変えてしまう。
報道自体が、裁きを待つまでもないひとつの罰になっている現状に、
自分も加担しているのだと思い知らされた。
信じる側にも疑う側にもそれぞれの正義があり、
両者の狭間でか細く上がる当事者の肉声を丁寧に掬い上げた
記者の真摯さも確かにひとつの正義だった。

弁護士・元裁判官:西愛礼さんコメント

真実は神と被告人だけが知っている。
神ではない人間が被告人を裁くとき、見えない真実と対峙しなければならない。
『揺さぶられる正義』が映しているのは、その向き合い方である。
真実が見えないからこそ、人間は信じるのだと思う。

脚本家:井上由美子さんコメント

フィクションではたどりつけない頂。
上田監督の問いかけは、引き裂かれた家族の姿を他人ごとでは終わらせない。
人が生まれ、育つことの重みに涙した。

ドキュメンタリー監督:大島新さんコメント

こんな記者、いる? 上田大輔監督は、企業内弁護士から 37 歳で新米報道記者になり、彼にしかできない仕 事を連打している。さらにこの映画では、自社の過去の報道姿勢を真っ向から批判し、自身にも刃を向けて いる。まじでこんな記者、いる? テレビジャーナリズムの、宝だと思う。

弁護士:亀石倫子さんコメント

正義を疑うことは、信じることより難しいかもしれない。

検察には検察の、弁護士には弁護士の、医師には医師の、それぞれが信じる正義がある。 これは、交わることのない正義のもとに闘う人々の物語だ。
難事件に挑み、次々と無罪を勝ち取る弁護士たちを追う中で、一人の記者は、自らが信じてきた「正義」を 疑い始める。
これは、事件報道のあり方に問いを投げかけた、その記者の挑戦の記録でもある。

関西大学教授:齊藤潤一さんコメント

関西テレビ制作のドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』では、長澤まさみ演じるアナウンサーが冤罪 事件に迫った。本作『揺さぶられる正義』もドラマと同じ関西テレビ報道フロアで撮影され、上田大輔監督 が「冤罪」と「メディアの正義」に切り込む姿が『エルピス』と重なる。果たして報道は誰のためにあるの か。正義とは希望なのか、それとも災いなのか――見終えた今も、その問いが胸の奥を揺さぶり続けている。

時事芸人:プチ鹿島さんコメント

赤ちゃんの「揺さぶり」事件を追った作品だが、記者やメディアは常に揺れ続けてほしいと痛感した。揺れ るとはつまり対象と向き合うことでもある。上田記者は最後、「向き合っていた」。煩悶する姿にメディアの 希望を見た。

ドキュメンタリー監督・石川テレビ記者:五百旗頭幸男さんコメント

横並びの前例踏襲を免罪符に止まった思考。
この国では、記者になるとすぐ「推定無罪」の原則を習うはずなのに、
それはすぐ「容疑者の顔を晒して報じる」慣習に書きかえられていく。
冤罪事件の捜査を批判はしても、冤罪事件の報道を省みることは稀だ。
そんなオールドメディアの側から
深い悔恨と贖罪をはらんだ強烈な問題提起がなされたことに、
20年以上オールドメディアに身を置く取材製作者として、
激しく揺さぶられている。

東海テレビ(『さよならテレビ』監督):圡方宏史さんコメント

上田さんは面倒くさい記者だ。警察や行政からの発表モノに従っていればいいのに、グレーに踏み込む。
悩みながら撮るので効率も悪い。煽らないから視聴率も取れない。だから会社からも嫌われている(たぶん)。
でも、そんな人がいるから、テレビはギリギリで踏みとどまれているのかもしれない。
一緒に働きたいかといえば答えに詰まるが、白黒つけず迷いながら取材対象に向き合う同業者がまだいる ことにホッとする。

ドラマプロデューサー:佐野亜裕美さんコメント

「信じること」と「疑うこと」はコインの裏表のようなものだと思っていたが、この映画の最後に出てくる 言葉を聞き、表裏ではなくて曖昧な境界線上を揺蕩うものなのかもしれないと思わされた。
「正義」という言葉もまた同様に。上田記者とともにその境界線上で揺さぶられ続ける2時間、ぜひ映画館 で体験してほしい。

ライター:武田砂鉄さんコメント

取り急ぎの報道が、家族や親子を引き裂く。
「この報道でよかったのか?」と戸惑う記者。
「真実」が無秩序に飛び交う時代に、
私たちの鈍感な五感をいかに改めるべきかを教えてくれる。

ジャーナリスト:浜田敬子さんコメント

なぜ逮捕前の映像があるのか。逮捕時にもその場所にメディアがいるのかーーメディアが無自覚に続けて きた慣行が今、問われている。
警察情報をいち早く報じる“特ダネ”競争が、冤罪を作り出すことに加担しているのではないか。メディアの 役割とは何か。報じるべき“事実”とは何か、を突きつけてくる作品だ。

キャスター・ジャーナリスト:長野智子さんコメント

警察発表をそのまま報じる第一報の印象は凄まじく、たとえ裁判で無実が証明されても当事者の生活を蝕 む。メディアがやるべきことは何なのか。弁護士資格を持つ報道記者が向き合った現実と葛藤を通して日本 のメディア最大の問題点が浮かびあがる。

映画監督:周防正行さんコメント

正義は、それぞれの人の寄って立つところによって違う。警察の正義。検察の正義。裁かれる側に立つもの の正義。裁判所の正義。真犯人を処罰する正義と冤罪を生まない正義。映画はさらに、小児科医の正義、保 護者の正義、報道の正義と、それぞれの立場の正義に迫る。どれも確かに正義だが、刑事司法には最も尊重 されなければならない正義がある。映画の中で監督と対峙する彼の無罪が最高裁で確定することを信じて いる。

 多くの冤罪を生んだ事件の報道を通して弁護士記者が描く贖罪と覚悟の物語『揺さぶられる正義』は、9月20日土曜日より、東京のポレポレ東中野、大阪の第七藝術劇場ほか劇場公開されます。

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『揺さぶられる正義』場面写真

ポスター

揺さぶられる正義

  • 監督:上田大輔
  • プロデューサー:宮田輝美
  • 撮影:平田周次
  • 編集:室山健司
  • 音声:朴木佑果/赤木早織
  • 音響効果:萩原隆之
  • 整音:中嶋泰成
  • 製作:関西テレビ放送
  • 配給:東風

  • 2025年/DCP/129分

2025年9月20日(土)より 東京・ポレポレ東中野、大阪・第七藝術劇場にて公開 ほか全国順次公開

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