ミャンマー出身で日本で育ったティンダン監督が自身の少年時代の体験をもとミャンマー人兄弟の小さな旅を描いた『エイン』が3月6日よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開(『めぐる』と併映)されるのを前に、特報と場面写真などが解禁されました。
『エイン』は、6歳で来日し日本で育ったティンダン(Thein Dan)監督が、日本映画学校(現・日本映画大学)の卒業制作として2006年に制作した短編作品で、タイトルはミャンマー語で「家」の意味。
ティンダン監督自身の体験をもとにしており、日本に来て1年、同級生や家族との関係の中で悩みを抱えて家出をした少年・アウンメインと彼についていく弟の姿を通して、人間関係やアイデンティティ、家族といってテーマを描いています。
主演のフォン・テェッキン・ウィンさんら日本在住のミャンマー人の方々が出演しているほか、多くの作品に出演する名バイプレイヤー・光石研さんが主人公と出会う警官役で特別出演。光石さんは2025年にバラエティ番組「アナザースカイ」に出演した際、番組中で『エイン』に触れています。
アジアフォーカス福岡映画祭2006、第3回伊参スタジオ映画祭など国内外の映画祭で上映た『エイン』は、ティンダン監督の新作『めぐる』とともに劇場公開の準備が進められていましたが、2021年にミャンマーで取材活動をおこなっていたティンダン監督が、市民による軍事政権への抗議デモを支持したとして逮捕・拘束されたために公開プロジェクトは延期に。監督が約2年にわたる拘束から解放されたことを受けプロジェクトが再始動し、劇場公開が決定しました。
公開に向けて解禁された特報映像は、ミャンマー出身のために同級生から好奇の目で見られる主人公・アウンメインが家族に対しても不満を募らせ家を出る過程が描かれ、後半では光石研さん演じる警官とアウンメインたちとの交流が映し出されます。
また『エイン』はコダック社の制作支援プログラム・コダックワールドワイドスチューデントプログラムのサポートを受けて16mmフィルムで撮影されており、特報映像でもフィルム撮影による映像の質感を確認することができます。
劇中のさまざまな場面を捉えた場面写真も解禁されました。
そして公開にあたり、日本映画学校校長・日本映画大学学長をつとめ2022年に逝去された映画評論家の故・佐藤忠男さんが過去に『エイン』に寄せたコメントが公開されました。(2007年開催「日本映画学校作品選」パンフレットより)
映画評論家:故・佐藤忠男さんコメント
エインとはミャンマー語で家のこと。この映画のシナリオを書いて監督したモンティンダンは中学生のときから日本にいるミャンマー人である。この映画は日本の中学校に学んでいるミャンマー人の少年の物語であるが、当然、彼自身の日本での経験が盛り込まれているであろう。中学校で主人公の少年をいじめる日本人の少年など、たいへんリアリティがあって、なるほどと思う。主人公が「日本人はどうしてあんなにいばりたがるのだろう」と言うあたりは、なるほどなるほどだ。学生映画がこうして、マスコミには容易に現れない在日のアジアの若者の声を日本人に伝えるルートになるのはたいへんいいことだと思う。
この映画で主人公の少年とその家族の人々を演じているのは在日のミャンマー人たちである。この映画は在日ミャンマー人の声なのだ。そういう役割りを果たせることを日本映画学校は誇りに思う。また少年が通う学校の場面の撮影にはモンティンダンが卒業した学校が全面的に協力して下さった。
日本人の善意を代表している巡査の役を光石研さんが演じて下さった。日本映画学校の実習作品に好意的に協力していただけて有難いと思う。
これまで映画祭や特集上映などで上映されたのみで長く一般公開が待たれていた『エイン』は、ティンダン監督10数年ぶりの監督作で電車の遅延をきっかけにさまざまな人の人生が交錯していく群像劇『めぐる』と同時上映で、3月6日金曜日より東京のアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開されます。