先行公開された広島でロングラン上映中の『やがて海になる』の10月24日全国公開を前に、三浦貴大さんと武田航平さんが演じる幼なじみ同士の友情が感じられる本編映像が解禁されました。また、映画監督・俳優ら著名人がコメントを寄せています。
『やがて海になる』は、瀬戸内の小さな島を舞台に、ずっと故郷の島に留まりうだつのあがらない生活を送る修司と、修司の幼なじみで東京で映画監督となり撮影のため島に戻ってきた和也、ふたりが想いを寄せていた幸恵の3人の交錯していく人生を描く、大人の「第二の青春」の物語。
修司役を三浦貴大さん、和也を武田航平さんと、多くの作品に出演し間もなく40代を迎える同世代の俳優ふたりが別々の人生を送る幼なじみを演じ、幸恵を宝塚歌劇団出身の咲妃みゆ(さきひ・みゆ)さんが演じています。
コロナ禍に予算ゼロで制作された短編『ある役者達の風景』(2020年)とその長編リメイク版が大きな話題となった沖正人監督が、出身地である広島県江田島を舞台に、自らの人生を反映させた作品を生み出しました。
『やがて海になる』場面写真。三浦貴大さん演じる修司
『やがて海になる』場面写真。武田航平さん演じる和也
8月に広島で先行公開されると満席回が続出し上映延長を重ね、すでに11月までのロングラン上映が決定している『やがて海になる』が10月24日より東京ほか全国順次公開されるのを前に、本編映像が解禁されました。
「どうせ死ぬなら、最期にお好み焼きでも食うとけばよかったのう…悔いが残るのう…」という修司のセリフで幕を開ける本編映像は、海に浮かぶ修司を浜辺で撮影中だった和也の映画のスタッフが発見。和也は助けられた修司を責めることもなく「お前のせいでシーン撮りこぼしたわ」と声をかけ、修司は「わしはお前のせいで死にそこねたわ」と答えるという、心配をしつつも軽く冗談を交わし合う幼なじみの友情が感じられる場面。なぜ修司は海に入ったのか、その理由も気になる映像となっています。
また、俳優の一路真輝さんや村田雄浩さん、脚本家の柏原寛司さん、映画監督の福島拓哉さんらが作品にコメントを寄せています。
俳優:一路真輝さんコメント
故郷を想う‥‥。沖監督の江田島への愛が溢れていて、その想いがキラキラと輝きに満ちた映像美になり、その美しさの中に、幼なじみの三人の切なくも優しい過去と現在が行き来する!
フィクション映画を観ているような、ドキュメンタリーを観ているような?(笑)
見終わったあと、心の浄化が出来たような爽快感に包まれました。
脚本家:柏原寛司さんコメント
心に残る青春・恋愛映画にはいくつかの共通点がある。
男が二人、マドンナの存在、舞台は海、そしてセンチメンタルなエンディングだ。
『冒険者たち』がそうであり、『去年の夏』や『夕なぎ』もそれに近い。
沖正人監督の『やがて海になる』もそうなのだ。
人はすぎた青春や恋愛のかけらを心のどこかに残しているから、こういう映画に引かれるのである。
俳優:村田雄浩さんコメント
とても優しい映画でした。それなりに年を重ねた登場人物の思いがこんなにもピュアに伝わってくる映画も珍しいと思います。
きっと監督のお人柄がそのまま作品に反映されてるのでしょう、人の心の動きも海や山の風景も、とにかく優しさを感じます。
出演者も自然にそこに生きていて誰も違和感を感じさせないのも素敵でした。
ある場面では、いつの間にか涙が流れてました。ただ不器用に応援したい気持ちを相手に伝えただけなのに。
見終わったあと故郷に帰りたくなると思います。とても優しくなれる映画でした。
映画監督:福島拓哉さんコメント
映画監督には一生に一度しか撮れない作品があると思っている。それは処女作かもしれないし最高傑作かもしれないし人によって違う。でも、もう二度と撮れない、その一本があるから映画監督という人生を進み続けることができる、そういう決定的な作品が、たしかにある。
この作品は、まさしくその決定的な強度のある傑作だった。
どれだけの努力をしたか、どれだけの時間を使い、どれだけの壁にぶつかり想いを研ぎ澄ませて注ぎ込んできたか。いわゆるウェルメイドな大人の青春ドラマだが、その想いの強度はジャンルの枠を大きくはみ出してスクリーンに溢れていた。
久々に会った沖さんは、充実した顔をしていた。日々を映画監督として生きているエネルギーが表情に出ていたとてもいい、顔だった。
ドラマ演出家・脚本家:筧昌也さんコメント
映画は「ものがたり」が大切だが、それは「ストーリー」ではなく「ストーリーテリング」のこと。
「物語」ではなく「物語り」。本作は普遍的なお噺を映画でしかあり得ない「物語り」で描くのが心地よく。
鮮烈で映画魔術的な1ショットが多幸感に満ちていました。
それはまるで広島県江田島の海のように。
映画監督・演出家:水田伸生さんコメント
故郷は「青春」を内包し、時間と共に熟成する。
三浦貴大がその熟成に苦しむ姿を、見事に演じる。
美しい瀬戸内海を見て育った、同じ広島生まれの身として、故郷で
私小説的映画を完成させた沖正人監督に…嫉妬を覚えた。
放送作家:東野ひろあきさんコメント
終始、穏やかだ。登場人物の誰もが心の中のわだかまりと葛藤しているけれど、
静かに真剣にそれと向き合っている。みんなそれぞれの毎日を生きていて、
その等身大の暮らしが無理なく描かれているところが素敵。過剰な演出、一切なし。
沖監督の作品を見ると、いつもホッとする。
脚本は『みんな笑え』(2025年)などの監督作がある鈴木太一さんが沖監督と共同で担当。
高校時代の修司と和也、幸恵を市村優汰さん、後藤陽向(ごとう・ひなた)さん、川口真奈さんと注目の若手俳優陣が演じるほか、占部房子さん、白川和子さん、大谷亮介さん、渡辺哲さんら実力派俳優陣が出演する『やがて海になる』は、10月24日金曜日よりヒューマントラストシネマほか全国順次公開されます。
『やがて海になる』場面写真。高校時代の3人。後藤陽向さん演じる修司(左)、川口真奈さん演じる幸恵(右・後ろ)、市川悠太さん演じる和也