坂本悠花里監督が少女を主人公に“死の向こう側”を描く『白の花実』(しろのかじつ)が12月26日に公開されるのを前に、映画監督の黒沢清さんや筒井武文さんらが作品に寄せた応援コメントなどが解禁されました。
オムニバス『21世紀の女の子』(2018年)の一編「reborn」(※坂本ユカリ名義)や国内外の映画祭で高い評価を得た『レイのために』(2019年)『木が呼んでいる』(2020年)など、中短編を手がけ注目を集めてきた坂本悠花里(さかもと・ゆかり)監督の初長編となる『白の花実』は、寄宿学校に転校してきた杏菜と、学校のカリスマで自ら命を断つ莉花、莉花の幼なじみである栞の3人の関係を軸にしたファントム・ファンタジー。
杏菜をモデルなどとして活躍する美絽(みろ)さん、栞を映画『ストロベリームーン』(2025年/酒井麻衣監督)などに出演する池端杏慈(いけはた・あんじ)さん、莉花をテレビドラマ「DOPE 麻薬取締部特捜課」(2025年)などに出演する蒼戸虹子(あおと・にこ)さんと、期待の若手女優たちが華麗に共演するほか、河井青葉さん、岩瀬亮さん、伊藤歩さん、門脇麦さんら実力派キャストが顔を揃えています。
『白の花実』場面写真。美絽さんが演じる主人公・杏菜(中央)、池端杏慈さんが演じる栞(左)、蒼戸虹子さんが演じる莉花
9月にはスペインで開催された第73回サン・セバスティアン国際映画祭でワールドプレミアされた『白の花実』が、12月26日より全国順次公開。
公開に向けて、本作にも通じる「目に見えないもの」を描いてきた映画監督の黒沢清さんや、坂本監督が影響を受けたというアメリカの小説家フランチェスカ・リア・ブロック作品の翻訳を手がけた翻訳家の金原瑞人さん、『孤独な惑星』(2011年)などで知られる映画監督の筒井武文さんらが作品に応援コメントを寄せています。
また、小説「九月と七月の姉妹」(デイジー・ジョンソン)の装画や同作映画版(2024年・アイルランド,英,仏,独,米/アリアン・ラベド監督)のティザーヴィジュアルなどを手がけた榎本マリコさんが『白の花実』をモチーフに描いたイラストも解禁されました。
映画監督:黒沢清さん応援コメント
バレエ学校の寄宿舎で起こる怪異と言えばあの有名な…!
よくぞこの分野に挑んだとまず感銘を受けた。
そしていつの間にか、あの世を見つめるかのような主人公のまなざしに吸い込まれていた。
翻訳家:金原瑞さん応援コメント
「ほんと、若い頃って、こういう映画を撮りたくなるよね!」という言葉は、ある意味、最高の讃辞です。20年後、30年後に監督本人が観直したとき、いままでに撮った映画のなかでこれがベストかもと思ってしまいそうな映画だと思いました。
(フランチェスカ・リア・ブロックが観たら、きっと自分の30代の作品を思い出すでしょうね)
映画監督:筒井武文さん応援コメント
何と繊細で、独創的な世界の造形であることか。坂本悠花里の長篇デビュー作『白の花実』は、見えることと存在することの境界で揺れ動く。学院と家庭でのそれぞれ三人の中心たる少女の消滅により、危うい均衡が崩れる。
鍵は、彼女が踊り始める直前の奇妙なフレームでの仕草の反復にある。意識でコントロールできない身体が暴走するダンス場面の凄絶さには驚嘆させられる。
作家・アーティスト:小林エリカさん応援コメント
少女たちのカルチャーやそこにある痛みが細部にまでこめられていて、
これをいまの日本で見れるのが嬉しい。
小説家:樋口毅宏さん応援コメント
まるでツルゲーネフの『初恋』のように、絶望から祈りを捧げる少女たち。
『尼僧ヨアンナ』を彷彿とさせる抑圧的な空間で、彼女たちが内に秘めた暴力性に抗うほど、美しさは静かに激しく増していく。
作品そのものが刹那の生命力に満ちている。
写真家:石田真澄さん応援コメント
整頓された学校と混沌とした友人との関係性。その対比に引き込まれる。
主演3人の演技をもっとみてみたいなと、素直に感じた。
写真家:松岡一哲さん応援コメント
無垢の気高さと、シャープな青さの境界線、その界隈に潜む光を感じました。
闇の奥で微かに光っている、言い換えれば希望とも言える何かを。
三者三様、堂々と表現し、清々しく、美しい。
榎本マリコさん描き下ろしイラスト
公開を記念して、レディースアパレルをメインとしたセレクトブティック・Sisterとのコラボレーションによるオリジナルトートバッグの発売も決定しました。
バッグのデザインは、コラージュアーティストとして活躍し、PerfumeやGLAYなどの人気アーティストやイタリア発のブランド・Tod'sなどのアートワークを手がけるMIDORIさんが担当。
12月15日より『白の花実』の製作・配給を担当するビターズ・エンドの公式ストアで特別先行予約がおこなわれるほか、12月26日より一部劇場とSister公式サイトでの販売が予定されています。
次代を担う才能たちが集まり新たな少女映画として結実した『白の花実』は、12月26日金曜日より、東京の新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国順次公開されます。
『白の花実』ストーリー
周囲に馴染めず、転校を繰り返す杏菜が、新たな寄宿学校で出会ったのは、美しく完璧な少女・莉花。
しかし、莉花は突然、屋上から飛び降りて命を絶ってしまう。残されたのは一冊の≪日記≫。ページをめくるたび、莉花の苦悩や怒り、痛み——そして、言葉にできなかった“ある秘密”が浮かび上がる。やがて日記から青白く揺れる“鬼火”のような魂が現れ、杏菜の心に静かに入り込み…杏菜は予想もつかない行動へと踏み出す——。