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吉田浩太監督が生活保護を題材に描く『スノードロップ』観客の声に支えられ上映再延長が決定

 生活保護の実態を実話をもとに描き、新宿武蔵野館で上映中の吉田浩太監督作品『スノードロップ』が、福祉関係者をはじめとする多くの観客の支持を集め上映再延長が決定しました。

 『スノードロップ』は、娘は母親の介護に追われ、家計を支える父親も病気となり、生活保護受給を申請した一家が、受託がほぼ決定する中で下す矛盾した決断を、ケースワーカーなど周囲の人々の姿とともに描いていく作品。2016年に実際にあった出来事をもとにした社会派映画となっています。

 かつて病気に倒れ生活保護制度を活用して再起を果たした経験を持つ吉田浩太監督が自ら企画して制作された作品で、生活保護受給を申請する一家の娘である主人公・葉波直子を西原亜希さんが演じ、親身に直子の対応をするケースワーカー・宗村幸恵をイトウハルヒさんが演じるほか、小野塚老(おのづか・らお)さん、みやなおこさん、芦原健介らが出演しています。

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『スノードロップ』場面写真。西原亜希さん演じる葉波直子(右)と、イトウハルヒさん演じる宗村幸恵

 国内外の映画祭での上映を経て10月10日に東京の新宿武蔵野館で公開された『スノードロップ』は、当初2週間限定上映の予定でしたが好評により1週間延長。さらに11月6日木曜日まで再延長が決定し、4週目へと突入するロングラン上映となりました。
 綿密な取材に基づく脚本作りやキャスト自身も福祉の現場を取材したことにより、ケースワーカーの仕事内容などがステレオタイプに陥ることなく描かれていることなどにより、ケースワーカーやケアマネージャー、実際に生活保護認定に携わる方々など、多くの福祉・介護従事者の共感と支持を集めたことが、ロングラン決定の大きな要因となっています。

 上映再延長にあたり、映画を鑑賞した観客の方々から寄せられた感想や、劇場でのトークイベントにゲストとして出演した内藤剛志さんら、多くの俳優が寄せた称賛のコメントが公開されました。

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新宿武蔵野館ロビーに貼られた『スノードロップ』をご覧になった方々の感想(提供写真)

映画を鑑賞された方の感想

何が正解かは支援者には分からない。
けれど、その人にとっての幸せを一緒に考え、それに寄り添うことはできる。そんな支援者でいたいと思いました。すべての福祉関係者に見てほしい映画です。

映画を鑑賞された方の感想

すばらしい映画でした。ひとりでも多くの人に見てもらいたいです。特に国会議員が見なくてはダメです。世の中のすべてのことに通じる問題です。この映画を作った人すべてに感謝します。

映画を鑑賞された方の感想

「生活保護は国民の権利です」という言葉でも救われない命がある。それでもみじめに思えてしまう。介護で閉じ込められてと周りは思うが、それが自分の尊厳になっている人もいる。人の心の難しさを学びました。そこを忘れずに働こうと思います。
―― ケアマネージャー
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新宿武蔵野館で10月23日におこなわれたトークイベントにて、『スノードロップ』主演の西原亜希さん(右)、助演のイトウハルヒさん(左)、ゲストの内藤剛志さん(提供写真)

俳優:内藤剛志さんコメント

生活保護をめぐる葛藤と沈黙を丁寧に描き、人間の尊厳に迫る。「慰めすら、みじめに感じる」この言葉が心に突き刺さる。西原亜希の背中に宿るのは、声なき叫びだ。「気づけるか?助けてと言えない声に!」それは僕への、そしてあなたへの、容赦ない問いかけだ。遠くではない。すぐ隣にあるかもしれない現実を突きつけられる映画だ。だが僕個人としてはタイトルを『逆境の中の希望』と読み替えたいと思う。

俳優:加藤ローサさんコメント

「真面目に生きることの重さ」主人公はただ真っ直ぐ一生懸命に生きているだけなのに、次々と重い物がのしかかり、胸を締め付けられるような場面が続きます。観ているこちらまで呼吸が浅くなるほど。そして物語の中にはある"権利"の存在があります。その権利を受け入れられないのも、また現実としてありました。このどうしようもなさに向き合わざるを得ない感覚が、観終わった後もジワジワと続く素敵な作品です。

俳優:佐津川愛美さんコメント

当たり前に生きていくことに、疑問を持つ。
あの人はどう生きたかったのだろうか。
早くに教えてほしかった。
そこには必ず、誰にでも尊厳があるということを。観終わったあと「スノードロップ」について調べた。人生とは、相反する感情の中でもがくことなのかもしれない。どうかこの作品から「生きていく」ということを知ってほしい。しっかりと切り取られた心震えるあのシーンが、あなたに届くことを願ってます。

俳優:酒井若菜さんコメント

静かな映画だ。
なのに、ずっと声のようなものが聴こえてくる。西原亜希と出会った人はみな、向日葵のような人だと彼女の印象について口を揃える。違う、彼女は月見草のような人だ。
太陽を待って、待って、待ってきた人だ。 彼女が演じた主人公・直子は、咲きたいのか枯れたいのか、それとも摘んでほしいのか。私たちはただ、「そこに根を生やさないで」と願い続ける。「はい」とか「うん」とか、こんなに寂しい相槌を打つひとを初めて見た。

俳優:徳永えりさんコメント

彼女の背中が映るたびに、静かに動悸がした。人が、社会が手を差し伸べるほどに息苦しくなった。私ならどうするだろう。どうしただろう。流れていく自分の涙すら、何故か申し訳なさを感じてしまう。自分を、他者を"救う"ということがどういうことか、深く考えなければいけないと思った。この作品を綺麗な言葉ではまとめられない。だから、多くの方にこの作品を観てほしい。
ありのままを、受け取ってほしい。

 吉田浩太監督は、SNSで作品への思いを綴った長文の投稿をしており、こちらも必読の内容となっています。

 実態はあまり知られず、一方で特定のイメージで語られることの多い「生活保護」について、その意味や意義を問いかける『スノードロップ』は、新宿武蔵野館で上映中。11月6日木曜日までの延長上映が決定しています。

【『スノードロップ』予告編】

『スノードロップ』あらすじ

母・キヨと同居している葉波直子の元、長年蒸発していた父・栄治が帰宅してくる。突然の父の帰宅に困惑する娘の直子だったが、母の迎えいれたい要望を聞き、同居するようになる。10年ほど経ったある日。キヨが認知症を患う中、栄治の持病の悪化により仕事が出来なくなり、一家は生活保護の申請を考え始める。娘の直子が生活保護を申請するため市役所に出向き、ケースワーカー・宗村とのやり取りを重ねて申請作業を進めていく。母が重度の認知症であり父も病気の悪化により仕事が出来ない状態で預貯金もほとんどない状態の一家は生活保護を受けるには十分な資格があった。宗村の親切な対応により生活保護申請はスムーズに進められていき、葉波家の訪問審査を受けて生活保護の受託はほぼ決まった。訪問審査を無事終えた夜。栄治は直子にある一言を告げた……。
ポスター

スノードロップ

  • 西原亜希 イトウハルヒ 小野塚老 みやなおこ 芦原健介 丸山奈緒 橋野純平 芹澤興人 はな

  • 監督・脚本:吉田浩太
  • プロデューサー:後藤剛
  • 撮影監督:関将史
  • 撮影:関口洋平
  • 録音:森山一輝
  • 美術:岩崎未来
  • 衣裳:高橋栄治
  • メイク:前田美沙子
  • スチール:須藤未悠
  • 助監督:工藤渉
  • 制作:古谷蓮
  • 主題歌:浜田真理子「かなしみ」
  • 製作:クラッパー
  • 宣伝・配給:シャイカー

  • 2024年/カラー/ステレオ/DCP/98分

2025年10月10日(金) 新宿武蔵野館にて上映中。11月6日(木)までの延長上映が決定

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